前編では、『紙くずの大冒険』がどのように生まれたのか、その誕生秘話をお届けしました。
後編では、この作品に込めた想い、キャラクターたちに託したメッセージ、そして8月29日に上演される『紙くずの大冒険2』への想いについて、伺いました。

ゴミたちは、どこか「私たち」に似ている。
『紙くずの大冒険』には、紙くずやペットボトル、空き缶、枯れ葉など、さまざまな"ゴミ"たちが登場します。
けれど、そのキャラクターたちは決して特別な存在ではありません。
「みんなすごく人間味があるんです。」
みゆきさんはそう話します。
自信が持てない子。
本当は誰かに頼られたい子。
場を明るくするムードメーカー。
一見すると個性豊かなキャラクターたちですが、その姿は、私たちが学校や職場、地域の中で出会う誰かと重なります。
「特別なキャラクターというより、"どこにでもいる友達"みたいな存在にしたかったんです。」
そして、もう一つ。
実はそのキャラクターたちは、みゆきさん自身でもあると言います。
「あの頃の自分はペイジみたいだったな、とか、ボトルンみたいな時もあったな、とか。全部、自分の一部でもあるんです。」
だからこそ、読んだ人、観た人もきっと思うはずです。
「私はどのキャラクターに似ているんだろう。」
そんなふうに、自分自身を重ねながら楽しめることも、『紙くずの大冒険』の魅力の一つです。

未来はまだ、何も決まっていない。
『紙くずの大冒険』の中で、一番伝えたい想いは何ですか。
そう尋ねると、みゆきさんは、一曲の楽曲を挙げました。
「一番伝えたいところっていうのが、一番現れている曲が『冒険の始まり』なんです。」
劇中で『冒険の始まり』が流れる頃、ペイジたちはまだ、自分たちの未来を知りません。
どんな仲間と出会うのか。
何が待っているのか。
それでも、一歩を踏み出します。
「この先何が待っているかわからない。でも、ワクワクしながら進んでほしい。それが、一番伝えたいことです。」
その言葉は、『紙くずの大冒険』という物語全体を貫くテーマでもあります。
誰かに選ばれなかった。
必要とされなくなった。
大切な人が自分のもとを離れていった。
そんな出来事は、自分自身まで否定されたように感じてしまうことがあります。
けれど、それは決して「価値がなくなった」ということではありません。
「その人にとって役目を終えたというだけで、価値がなくなったわけじゃない。だから、次に進めるんです。」
『紙くずの大冒険』は、「捨てられること」を終わりとして描く物語ではありません。
新しい一歩を踏み出す"始まり"の物語です。
ラテン調の軽やかなメロディーに乗せて届けられるのは、「未来はまだ何も決まっていない」という前向きなメッセージ。
『冒険の始まり』には、そんなみゆきさんの願いが込められています。


子どもたちに届けたいのは、「想像する心」。
『紙くずの大冒険』を通して、子どもたちに一番感じてほしいことは何ですか。
そう尋ねると、みゆきさんは少し意外な答えを返してくれました。
「実は、すごくシンプルなんです。例えば、このペットボトルがしゃべったらどう思う?っていうことなんです。」
飲み物が入ったペットボトル。
いつも使っている机や椅子。
普段なら何気なく見過ごしてしまうものにも、それぞれ気持ちがあったら――。
「難しい言い方をすると、擬人化できるように感じてほしいんです。」
『紙くずの大冒険』では、ゴミたちが笑い、泣き、悩み、仲間と出会いながら冒険を続けます。
それは、子どもたちに「ゴミも生きている」と伝えたいわけではありません。
「その子が好きでも、嫌いでもいいんです。でも、その子も何かしゃべっているかもしれないって思える心を持ってほしい。」
身の回りにあるものにも、それぞれ物語があるかもしれない。
そんなふうに想像する力を持ってほしいという願いが込められています。
その想像力は、きっとゴミだけではありません。
人との関わり方や、身近なものへの見方、自分とは違う誰かを理解しようとする気持ちへもつながっていくはずです。
「物を大切にしよう」という言葉は、そのあとについてくるものなのかもしれません。
まずは、目の前にあるものにも、何かを感じ、何かを伝えたい想いがあるかもしれない。
『紙くずの大冒険』には、そんな想像する心を育てたいという願いが込められています。
捨てられた、その先へ。
8月29日(土)に上演される『紙くずの大冒険2』。
前作よりもキャラクターはさらに増え、物語も大きく広がります。
今回のテーマは、
~ぼくたちの夢は、捨てられて終わりじゃない。~
「つまり、捨てられてからどうなっていくのか、というところを楽しんでいただきたいです。」
「今回は、自分から"捨てられる"ことを選ぶシーンがあるんです。」
ゴミたちにとって、「捨てられる」ということは一番怖いこと。
孤独であり、終わりを意味するもの。
それでも、あえて自らその道を選ぶキャラクターたちがいます。
「みんなが『不幸だ』と思っていることって、本当にそうなのかな?って問いかけたいんです。」
ロストランドを恐れるゴミもいれば、そこを楽園だと思うゴミもいる。
同じ出来事でも、見方が変われば意味も変わる。
そんな新たなテーマにも、ぜひ注目してほしいと話します。
また今回は、初めて観る方にも楽しんでもらえるよう、物語の冒頭でペイジがキャラクターたちを紹介する場面が用意されています。
前作を観ていない方も、安心して物語の世界へ入り込める工夫が詰まっています。
一方で、昨年の公演を観た方には、仲間たちの関係性や成長、つながりがより深く描かれていることで、新たな発見や感動が待っています。

「物語だけは、一生描き続けたい。」
『紙くずの大冒険』は、これから先も描き続けていきたい作品ですか。
そう尋ねると、みゆきさんは迷うことなく、
「『紙くずの大冒険』というタイトルを持っている以上、この物語は生きてて。絶対に広がっていくと思うから、一生描き続けたいです。」
そして、こんな言葉が続きました。
「たとえダンスが作れなくなっても、音楽が作れなくなっても、物語を考えることだけは最後まで続けたいと思っています。」
『紙くずの大冒険』は、ゴミたちの物語。
けれど、その本質は「ゴミ」を描くことではありません。
「物語を描くっていうことは、ゴミたちの声を拾う作業なんです。」
どうしてここに来たのか。
何が悲しかったのか。
どんな夢を持っているのか。
その声に耳を傾け、物語として紡いでいく。
それがみゆきさんにとっての創作です。
誰かがふと立ち止まったとき、「紙くずの大冒険」が、その人の背中を少しだけ押してくれる存在であってほしい。
「身近な存在から、何かヒントをもらえるような作品でありたい。ふとしたときに、自分が進む方向を少し助けてくれるような、そんな物語を描いていきたいと思っています。」
その言葉からは、この作品が"今この瞬間の舞台"ではなく、長い時間をかけて育っていく物語なのだということが伝わってきました。
おわりに
作品が生まれた背景や、そこに込められた想いを知ることで、『紙くずの大冒険』の世界をより身近に感じていただけたなら嬉しいです。
8月29日、舞台の上で生きるペイジたちの姿を、ぜひ劇場で見届けてください。

次回予告
8月29日に上演される『紙くずの大冒険2』では、新たな仲間たちが物語に加わります。
次回は、舞台で初登場する新キャラクターたちをご紹介。
それぞれがどんな個性を持ち、物語の中でどのような役割を担うのか――。
『紙くずの大冒険』の世界をさらに広げる、新たな仲間たちの魅力をお届けします。


